SSブログ

喫茶店と和菓子屋さん~その④ [お仕事話]

12月、私は本気で仕事を辞める事を上司に伝えた。
予算がいこうが、店がどうなろうが、その時の私にはどうでもよかった。
S社との関係や仕事への不信感で、体力も限界だった。
なによりも、一番好きなはずの接客が苦痛で、お客様と話すのが嫌になっていた。
『接客なら、マネキン会社に登録して続けられると思うんです。ここにいたら私はつぶれます』
その台詞を聞いて、上司もわかってくれたようだった。

新店舗も、今までやってきてはじめて、1月度予算は達成できそうだと思った1月26日、上司から一報がはいった。

『社長が亡くなったから』

一瞬、何を聞いたのかわからなくなった。涙がでた。後輩たちが心配した。
店長なのに、店で涙を流した事を恥じた。
社長はそんな顔で店に立つことなど望んではいないだろう、そう思う事でなんとかその日の仕事を全うした。

2月末、私は京都にいた。
もちろん、『鈴虫寺』に行く為だ。
今回はいつもと違う旅がしたくて、新宿から深夜バスで京都に行った。
早朝5時半に京都駅に着くと、朝から見学のできるお寺をまわって歩いた。
あるお寺で、ステテコ姿のおじさんが話しかけてきた。
『お嬢さん、随分お早いねぇ』
懐かしいような、落ち着くようなその語り口調で私にいろいろな話をしてくれたおじさんは、まるで私の今の心境を知っているようだった。
30分程話して、そのおじさんがお寺の中に入っていた。
思い返してみれば、それはお寺のお住職だったのではないだろうか。

京都から帰ると、上司に話しをした。
『もう少し、踏ん張ってみようと思います』
『そう言うと思っていた』

3月に入ると、社長のお別れ会があった。
目の前にいる社長の遺影はとても素敵ないい笑顔だった。
『社長、今月頑張れば、年間予算を達成します』
きっと、社長は
『ご苦労様』
そう言ってくれているに違いない。

3月20日、上司から電話が来た。
『4月1日付けで○○店に異動して欲しい』
『・・・』

複雑だった。
やっと、お店が軌道に乗ってきたのに。
その反面、今のこの精神的苦痛から逃れる事が出来る・・・そう思うと嬉しい気持ちもあった。

4月1日、今の新しいお店の売上を上げるために異動になった。

前の店の予算達成という自信をひっさげて(。・_・。)ノ

                                              ~完~


nice!(5)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 5

コメント 6

ひよこ豆

そーだったのか・・
頑張ったよね。
だから、その時の自信が一回り成長させてくれたんだよね。

この経験って、お金で買えないものだから。
れのさんを、これからもずっと支えていく力になると思うよ。
by ひよこ豆 (2005-07-12 00:46) 

れの

ひよこ豆さん>ありがとうございます(。-人-。) かなり大変だったけど、自分でもいい経験を出来たと思っています。長いものに巻かれるという技も覚えました・・・
by れの (2005-07-12 22:46) 

Baldhead1010

やはり見てくれてる人はちゃんといるんですね。
by Baldhead1010 (2005-07-13 14:01) 

れの

Baldhead1010さん>はい。そう思いました。これからも大変なことがいっぱいあると思うけど、頑張ろうと思っていますヽ(´エ`)ノ
by れの (2005-07-13 20:47) 

まー君

2月の京都旅行の真相はこんな事情があったんだね。
by まー君 (2005-10-19 23:52) 

れの

まあくん>あ・・・コメントしてくれていたのに知らなかった。あはは。失礼いたしました。そうです、去年の2月の京都旅行はこういうことでした。うふ♡
by れの (2006-03-02 23:40) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。